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心とからだのセラピースペース


by まりりん

『私の記憶が確かなうちに』

『私の記憶が確かなうちに』 
  「私は誰?」「私は私」から続く旅

    クリスティーン・ブライデン 著
    中川経子 著          クリエイツかもがわ  2000円+税


友人が
認知症の患者本人が書いた本
『私は誰になっていくの?-アルツハイマー病者から見た世界』
を教えてくれました。
認知症を持つ人の気持ちがよく理解できたと。

図書館に行くと、
同じ著者の4冊目の本を見つけ、
これを先に読むことにしました。

1冊目が出たのが1998年。(邦訳は2003年)
2冊目の『私は私になっていく―認知症とダンスを』が
2004年に日本で先行出版。
そして、この本が出たのが2017年です。


オーストラリアで、
大統領に科学分野の情報提供、アドバイスをするという
非常の高度な能力を駆使する役職を
有能に精力的にこなしていましたが、
それが少しづつ、ままならなくなり、
1995年に46歳でアルツハイマー病の診断を受けます。

最初に診断した医者は
「はい、間違いなく、アルツハイマー病です。」
「これらのスキャンには脳の損傷がはっきり映っています。
すぐに仕事を辞めなければなりませんね。
要職にとどまることはできません。」
「若年性アルツハイマー病の進行は、一般的に非常に速いものです。」
「普通、診断がなされた後は、
生活の基本的なことに対する介助が必要になるまでには5年くらいですが、
最後を迎えるまでには、
さらに2年か3年とかを高齢者介護施設で過ごすことになります」
と告げます。


「周りの世界は以前と変わりなく見えましたが、
たった今、
天地がひっくり返るほどの地震が起きたばかりのように感じていました。
私の過去と現在の間に巨大な地震のような変動があったのです。
未来は、私のあらゆる感情を吸い込んでしまう、
いったん入ったら脱出できないブラックホールでした。」


発症から20年余りにわたって、なぜ彼女は
かなり知的な仕事を継続できているのか、
(これはかなり異例の、驚異的なことです)
そのヒントが得られるかもということで、
著者の生い立ち、成長過程、家庭生活、職業生活が
紹介されています。

華々しい職業生活の背後には、
とても厳しい私生活があり、
そこを読み進めるのは結構きつかったのですが、
そのあとには、素晴らしい喜びが展開されます。


退職し、いったんは引きこもり、
落ち込みますが、
やがて、第2の仕事、役割、生きがいを見出し、
活躍し始めます。
大変な苦労と頑張りと共に。


「私はこれらすべての偏見を、
行く手を阻む邪魔な木や枝のように切り落とし、なぎ倒しては、
押し進んでいるのです。
認知症のない人たちに、
認知症とともに生きている人たちは、
社会に貢献ができるということに、
私たちは、今でも社会との絆を必要としていることに
気づかせることを目指しているのです」


著者は日本にもたびたび訪れ、
認知症当事者、医療・福祉関係者と交流を重ねているそうです。











by d_rainbow | 2017-09-13 16:20 |